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従業員に対する決算賞与の経費計上する時期

さて、本日ご紹介するのは、
『従業員に対する決算賞与の経費計上する時期』です。

「決算賞与について、通知してから1月を超えて支払っても未払計上時の経費として問題ないか」という質問を受けました。
今日はこの質問について回答いたします。

まずは、原則的な取扱いをおさらいしましょう。
法人税法では、以下の要件の①又は②を満たした賞与について、従業員に支給額を通知した(支払った年ではありません)年に経費にできると書かれています。
③については、その支払った日の属する事業年度に経費にできると書かれています。
法人税法施行令第七十二条の三
①労働協約又は就業規則により定められている賞与
②以下の要件をすべて満たす賞与
イ その支給額を、従業員別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての従業員に対して通知をしていること。
ロ イの通知をした金額を当該通知をしたすべての従業員に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一月以内に支払っていること。
ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
③上記①及び②以外の賞与

以上3つの要件のいずれかを満たす必要があります。

よって、3月決算の会社が、3月に決算賞与を経費に計上して、翌4月に支払った場合には、3月の経費とすることができます。

今回の質問は、賞与の支払いを5月以降にした場合にはどうなるのかということを聞いています。
結論から申し上げますと、この場合3月の経費とならず、支払った日の属する事業年度の経費となります。
これについて、参考判例がありますのでご紹介いたします。

これは、1月決算の請求人(納税者)が、決算賞与を2月以降に支払った場合の事例です。

○請求人
本件施行令の制定趣旨は、法人の利益調整を防止する要請からなされているのであるから、利益調整でないことが明らかな本件各決算賞与については、本件施行令によらず損金の帰属年度を判断すべきである。
請求人の場合、事業年度終了日の税引前利益により決算賞与が確定するから、本件各決算賞与は本件各事業年度の経費となるべきである。
との主張を行いました。

それに対して原処分庁では、以下の主張を行いました。
○原処分庁
本件施行令は、所得計算の明確及び課税の公平を確保するため、決算賞与の経費計上する時期を定めたものであると解されるから、本件施行令により判断するのが相当である。
また、本件決算賞与は、上記①の賞与には該当せず、また、事業年度終了後1月経過後に支払ったので、上記②の賞与にも該当しない。よって、上記③の賞与に該当し、実際に支払われた日の属する事業年度に経費となる。

以上の主張を踏まえた結論は、以下のとおりです。
○結論
請求人は、本件施行令の制定趣旨は、法人の利益調整を防止する要請からなされているのであるから、利益調整でないことが明らかな本件各決算賞与については、本件施行令によらず損金の帰属年度を判断すべきである。と主張するが、本件施行令の趣旨は、決算賞与の支給実態にかんがみ、その経費計上すべき時期を具体的に定める事で統一的な基準として定める事により、課税の明確性及び統一性を図ったものであるから、請求人の主張は採用できない。

本件各決算賞与については、上記①又は②のいずれにも該当しない事から、③に該当する。

従って、実際に支払った日の属する事業年度において損金の額に算入されることとなる。
との判決が下されました。

結果として請求人の主張がすべて認められない判決となりました。
皆さんも決算賞与を計上する場合には、その支払時期にご注意ください。

(使用人賞与の損金算入時期)
法人税法施行令第七十二条の三
内国法人がその使用人に対して賞与(臨時的な給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち、退職給与、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び法第五十四条第一項 (新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの以外のものをいい、法第三十四条第五項 (役員給与の損金不算入)に規定する使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対する賞与を含む。)を支給する場合には、当該賞与の額について、次の各号に掲げる賞与の区分に応じ、当該各号に定める事業年度において支給されたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。
一 労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額の通知がされているもので、かつ、当該支給予定日又は当該通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理をしているものに限る。) 当該支給予定日又は当該通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度
二 次に掲げる要件のすべてを満たす賞与 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度
イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。
ロ イの通知をした金額を当該通知をしたすべての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一月以内に支払つていること。
ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
三 前二号に掲げる賞与以外の賞与 当該賞与が支払われた日の属する事業年度